こごみ(クサソテツ)は春の限られた時期にしか採れない山菜ですが、昔の人々は知恵を絞り季節を超えて楽しめるよう工夫を凝らしてきました。
この記事では時代ごとの保存方法を探りながらその背景についても考察していきます。
縄文時代(紀元前1万年頃~紀元前300年頃)
保存方法:この時代は農耕がまだ発達しておらず、こごみのような山菜は採れたてをすぐに食べるのが基本でした。保存技術はほとんどなかったと考えられています。
考察:もし保存していたとすれば、土に埋めて冷却したり木の皮や葉で包んで湿度を調整するなど、自然を利用した方法が考えられます。縄文遺跡からは干し植物の痕跡は見つかっていませんが、他の食材を燻製にしていた形跡があることからこごみを軽く火で炙る保存方法もあったかもしれません。
背景:この時代は「採れるときに食べる」ことが主流であり、こごみは春の貴重な食料源として新鮮なまま食べることが重視されていた可能性があります。
弥生~奈良時代(紀元前300年頃~8世紀)
保存方法:稲作が広がり保存食の概念が発達しましたが、こごみはまだ季節の食材としてその場で消費されることが多かったと考えられます。しかし、塩が利用されるようになり保存の工夫が進みました。
具体例:塩をまぶして保存する「塩漬け」の原型が生まれた可能性があります。奈良時代の貴族が「春菜」を楽しんでいた記録はあるもののこごみの保存に関する記述はほとんど見られません。ただし庶民の間では干して保存する習慣があったかもしれません。
背景:この時代の食料保存の優先順位は米や魚が中心であり、こごみはあくまで季節を彩る副食材という位置づけでした。
平安~中世(9世紀~16世紀)
保存方法:この時期から干す技術が少しずつ広がり、こごみを茹でて乾燥させ保存食にする方法が農村部で用いられるようになりました。
具体例:山深い地域では春に採取したこごみを天日干しにし、竹かごや布に包んで保管する方法が取られていました。また、塩漬けも進化し塩の量を増やして長期保存を可能にする工夫がなされました。
背景:戦乱や飢饉が相次ぐ時代だったため、保存食の重要性が増しました。こごみはビタミン補給源として乾燥させたものが貴重な食料として重宝されたと考えられます。
江戸時代(17世紀~19世紀)
保存方法:この時代になるとこごみの保存が本格化し塩漬けや乾燥が主流となりました。特に東北や信州の農村では保存技術が発展しました。
具体例:
・塩漬け: こごみを茹でて塩とともに層状に詰めて容器に保存。冬場でも食べられるようになりました。食べる際には塩抜きをして調理します。
・乾燥: 茹でたこごみをザルに広げて日陰で干すことで保存性を高めました。
背景:江戸時代は食文化が発展し、保存技術も向上しました。寒冷地では冬に野菜が不足するため、こごみを保存して食糧確保を行っていました。山菜採りは家族や村全体の共同作業として行われて保存の作業も分担されていたようです。
明治~昭和初期(19世紀末~20世紀中盤)
保存方法:伝統的な塩漬けや乾燥が継承される一方で近代的な保存方法も導入されました。
具体例:塩漬けを瓶詰めにして密封する家庭が増えたり、市場では乾燥こごみが流通するようになりました。冷蔵庫の普及はまだ限定的でしたが、裕福な家庭では生のこごみを冷やして短期間保存するケースも見られました。
背景:西洋文化の流入により食生活が変化しましたが山間部では昔ながらの保存方法が継承され、こごみは「日本の味」として根付いていました。
現代(昭和後期~現在)
保存方法:冷凍技術が発展してこごみの保存方法もさらに多様化しました。
具体例:茹でたこごみを冷凍保存するのが一般的になり、塩漬けや乾燥は減少しました。ただし東北などの一部地域では伝統的な保存法を続ける家庭もあります。
背景:便利な時代になり、保存するよりもスーパーで購入する人が増えました。しかし近年の自然志向や健康ブームの影響で伝統的な保存法が再評価される動きも見られます。
こごみの保存の意義
こごみの保存技術は、春の恵みを冬まで楽しむための知恵であり、季節を超えて自然とつながる方法でもあります。縄文時代の素朴な食べ方から、江戸時代の工夫、現代の冷凍保存まで、こごみは日本人の暮らしの中で受け継がれてきました。
もしおひたしが好きなら、昔の人が塩漬けにしたこごみを水で戻して食べた気持ちを想像してみるのも面白いかもしれませんね。
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